第30回 本当のブラック企業
新卒の採用面接をしていると、ときどき過重労働・違法労働・パワハラの有無についてとても気にしている学生に出くわします。
アルバイトでの厳しい労働経験があるのかもしれません。家族からブラック企業には入社しないように強く言われているのかもしれません。
過重労働・違法労働・パワハラを行っている会社は、確かに入社すべきではありません。
しかし、そんな学生に会うたびに、「それより、もっと酷い本当のブラック企業があるのを、わかっているのかな?」と思うのです。
過重労働・違法労働・パワハラは、もちろんダメです。しかし所属する社員は、それが許されない行為だと思ったら、自分の意志で転職することができます。労働基準監督署に相談に行くこともできます。つまり社員には逃れたり、訴えたりする手段があります。
本当のブラック企業とは、顧客に嘘をつく会社です。
建築基準法の規定に違反して賃貸マンションを建設していたり、検査を不正にかいくぐり自動車を販売していたり、虚偽の説明をして無駄な保険料を払わせたり・・・。
これらを組織的にやっている会社のほうがよっぽどブラック企業だと思うのです。
善意の顧客を騙しているのです。社員は、不正だと思うなら、訴えたり、辞めたりできるのに、意図的に組織としてそれを行っているのです。不正をすることに麻痺し、正義の魂を捨てている。
程度の差はありますが、顧客を騙して販売代金を受取るのは、特殊振込詐欺と何が違うのでしょうか?
確かに、入社後に、過重労働・違法労働・パワハラのブラック企業だと分かり、すぐに退職するくらいなら、事前にしっかり調査しておきたいということであれば理解できます。しかしそれ以上に、顧客に嘘をついていない会社がどうかも、自分の目でしっかり調べて欲しいです。入社後、いつのまにか麻痺させられて、正義の魂を捨てることに何も感じない社員にならないように・・・。
